『バスケットボール戦術学2』刊行記念座談会

なぜピック&ロールを選択するのか?

この本を読んで

理解してもらえたらうれしい

宮本 ここで2つのグループに分けておうかがいしたいんですけども、最近ピック&ロールは、日本のバスケットボールでもトレンドとして非常にBリーグの番組とかコンテンツでも取り上げられることが増えてきてますよね。小谷先生と片岡さんは育成年代や大学のアマチュアレベル、アルバルク東京の森さん、代表の前田さんはプロなわけですが、ピック&ロールの捉え方という部分で、この本に関してそれぞれ意識されたところはありますか。

 

小谷 今回の書籍の優先順位としては1対1が最も高く、それでうまくいかない場合、1対1で打破できない場合にスクリーンを用いてというような流れでもってきたんですけど、そこの流れについては森さん、前田さんはどう捉えているのかなというのは気になりますね。

 

前田 なかなか深い質問ですね(笑)。究極1対1で勝っちゃえばいい。点が取れればいいということが戦術の一つだと考えれば、それが一番シンプルで最強ではあるんですよね。だからそこから話しが始まって、もしダメな場合はどうすると。オフボールスクリーンするよねとか、ボールにスクリーンに行くよねっていう話しから始まっていたので、僕もちゃんと把握しているわけではないですけども、レベルの高い低いの差の一つに打つ手数の差があると思うんですよ。オフェンスが先手を打つのか、ディフェンスが先手を打つのか、40分間で何回やり取りがあるかというのは、やっぱりプロになってくると非常に多くなる。その打つ手を1回1回抽出して紹介するというイメージもあるのかなという感じはあります。なのでアマチュアの人たちが、この手は打ったことはなかったなということがもし1つでもあったらうれしいかなと。是非、活用して欲しいですよね。

 

宮本 森さんはどうですか。アルバルク東京は特にピック&ロールが特徴的なチームだと思うんですけども。

 

森 今は世界を見ても1対1でコンスタントにアドバンテージをとれる選手というのはジェームズ・ハーデンくらいしかいなくて、それ以外のそういった選手がいないチームはなんらかの形でアドバンテージを取る方法を探さなくてはならないと思うんですよね。その上である程度1対1で勝てることを前提にして残りのオフボールスクリーンだったり、ピック&ロールだったりというのが機能すると思うので、『戦術学』の1巻から2巻への流れというのはそれを意図されてるんだろうなと感じました。2巻のピック&ロールに関していえば、この本の流れというのはよくできていると思っていて、相手がこう来るからこういう対策がある、そういう対策があるからこういう攻め方があるみたいなことは、実際に僕らも現場で考える思考方法と似ているんですよ。だからそういった視点で見ていただけると、ファンの方も結構楽しめるのかなと思います。例えば、「この選手はシュートないから、相手のチームはこういう守り方をしているんだろうな」とか、「相手がこういう守り方をしているから、このプレーを選択しているんだな」とか、ざっくりとでも見えるようになると、バスケへの理解は一層、深まると思います。ファンの方にはそういう風にこの本を活用することもできるんじゃないかなと思いますね。実際に指導にあたるコーチの方々も、プロの現場の思考方法というのも垣間見えてくると思いますので、いろいろな方に読んでいただけたらうれしいです。

 

宮本 アマチュアレベルでピック&ロールをどのように捉えているのかということをお聞きしたいんですが、実際、大学ではどうですかね。

 

小谷 トップレベルのところで、ハーデンみたいに1対1でずっと40分間イニシアティブを取れる選手がいればいいんですけど、そうではないからピック&ロールとか協力し合って有利な状態を作っていこうとするんだと思うんですけど、そこを理解しておかないと1対1で崩せるのにピックスクリーンを呼んだりというようなことがあると思うんです。例えばウチ(流通経済大学)とアルバルク東京がやったときにピックなんていらないと思うんです。普通に終わっちゃう、一瞬で。大学生はBリーグとかNBAを見て真似するので、ピック&ロールからスタートする。でも状況を見て1対1で崩せるのであれば、わざわざスクリーナーがディフェンスをつれてくる必要なんかない。そこの優先順位ですよね。BリーグやNBAではなんでピック&ロールをやっているのかということを、この本で理解していただければと思いますね。

 

宮本 片岡さんはどうですかね?

 

片岡 2人で完結するオンボールスクリーンにしても、3人目、4人目が絡んでくるスペーシングだとしても、大きく変わらないと思います。その為、複雑なこともシンプルなことの積み上げであるということがきちんと一貫して書かれているということが本書籍の価値だと感じています。最初の核が分かれば、スペーシングが変わったり、最後の決断にいたるまでに考慮すべき情報が増えたとしても、シュート直線の攻防の駆け引きを読み解けると感じています。スキップパスからドライブが発生し、インサイドの選手へアリウープパスでダンク等のプレーがあったとします。そのきっかけは、ミスマッチをケアする為にディフェンス側がポジショニングを変えたりしていることが要因だったりします。自分自身も、様々な講習会を通じて学ぶことで、バスケットボールを観戦する楽しさが倍増しました。長くなりますが、もう少し自分自身の経験談を語らせてください。私は、埼玉県社会人バスケ連盟に所属するチーム(宮城クラブ)のヘッドコーチを務めていました。毎週末、仲間と一生懸命に練習をして、埼玉県連盟の決勝戦に進出。大東文化大学バスケ部のBチームを試合をしたことがあります。強豪大学バスケ部のBチームという事もあって、凄く良いスペーシングの中で、オンボールスクリーンを駆使してきます。こちらもディフェンス戦術は用意しますが、僅かな綻びを見逃してくれず、何回かゴール下でのショットを許しました。ピリオド感を利用して、少しだけディフェンス戦術を変えたのですが、次は、そこの穴を狙われます。常に後手後手になってしまいました。結局、オンボールスクリーンの失点も響き、決勝戦は敗退し、責任を感じると共に、非常に悔しい思いをしました。毎日、眠れないぐらいに頭を悩ませている時期に、ERUTLUCさんの主催するJUNIOR BASKETBALL SUMMITで前田さんの講習を受講しました。その時に、オンボールスクリーンでの残り3人のスペーシングの違いに対する守り方のメリットやデメリットという基本的な考え方や、優先順位や責任領域を学びました。その後の宮城クラブで練習をする際にも、凄く役に立ち、チームの仲間と共にとても充実した時間を過ごすことが出来ました。自分にも上記のような実体験がある為、原稿や図解を見る時には、現場での活用しやすいように表現されているかどうかを意識してフィードバックをしていました。

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