『バスケットボール戦術学2』刊行記念座談会

プレーヤーも指導者も

「言語化する能力」は必須

宮本 本当に僕自身も『戦術学1・2』を読めば、バスケットボールの重要なポイントは抑えていけるなというのが率直な感想です。今さら聞けないこと、今さら共有することが恥ずかしいこととかを学びなおせるという部分があるなと思っています。あとファンの目線でいうとBリーグとか日本代表の試合を見ながら、「ピック&ロールが」とか、「ここは1対1で攻略できる」とか見ることって非常に難しい。そういう意味で書籍で自分のペースで考え方を順序を追って理解できるというのはすごく教科書というか、教材としてぴったりだなと思いましたんですけど、大学とか育成年代とかで生かして行きたいところはあったりしますか。

 

小谷 僕は単純に部員に読んでもらいたいです()

 

宮本 バスケットボールをするときはこれを読みましょうという、必読の2冊にしてもらいたいくらいです()

 

小谷 ウチの部員はホント僕の本を読んでくれないんで(笑)。読んでもらいたいです。

 

宮本 動画じゃないからこそ伝えられることが多いなと思うんですけど。

 

前田 そうなんですよ。改めて文字で起こしたものというのは新鮮だなと思いましたね。今は映像を自由に操れちゃう時代じゃないですか。指導者が見せたい映像を簡単に確保できてしまうし、それに丸だろうが矢印だろうが入れることもできてしまう。言葉にしなくても伝える術がたくさんあるので、そっちに頼ってしまっている部分がある。楽なんですよね見せちゃえばいいから。でもそれをあえて文字にするというのはいい経験だったし、自分も勉強しなおしたような気分になりました。

 

宮本 日本のバスケットボールって共通言語がなかった気がするんですよ。この2冊で言語が統一されたんじゃないかなと。そういった意味ではどうですか。

 

森 この本のいいところというのは1冊の本にある程度の量の情報がまとまっているということ。ピック&ロールの基本的な攻防の部分だったらこの本を読めば網羅されているというのが強みだと思うんですよね。例えば動画だったら、10分でハードショウを紹介しましょうとか、ぶつ切りでいろんなところにあるんですけど、それをいざ調べたいときに見つけ出すのが大変。動画にされているということは必ず発信している人が必ず情報を切り取っていて、自分が欲しい情報ではなかったりもする。ハードショウの目的やヘルプサイドの動きを知りたいのに、ぜんぜん別のところにフォーカスされていたりとかするので。それをある程度まとまった形で紹介できるというのは書籍の強みだと思うんですよね。そういう中で、ある程度整理された用語が使われているというのはいいことですよね。その上で各地方でそれぞれの指導者が独自の言語を使っているみたいな現象も多く見られるところだと思うので、それが動画としてバラバラあるんじゃなくて、書籍としてバンとあったほうが、あとから参照しやすいと思うので。

 

ズボン 動画だったりブログだったり、いろいろなコンテンツにアクセスしやすい現代に書籍という、いわばオールドメディアみたいなものでしっかり体系だててまとめられているというのはすごく素晴らしいなと思うんですけども、これをどう使うかという時に、座学みたいな方法も一つのやり方なのかなと思っていまして、特に育成年代とかは座学でバスケを学ぶという機会はあまりないと思うんですよね。そういった座学の必要性みたいなことについてはどうですか?

 

前田 座学というところだと、言語化する能力というのは指導者は絶対だし、プレーヤーも持っているべきだと思うんですね。もっというとチームとしての共通用語がコーチとプレーヤーにあると、10言いたいことが1で済む場合もある。言葉をイメージする、逆にイメージを言葉にする、そういうトレーニングが座学ではできるんじゃないですかね。コートでは本当は言語化しなければいけないところを飛ばしちゃって、「オマエ、こっからこっち」みたいなことも座学ではそうはいかないですからね。そこをあえてやるというのは、ゲーム中に必要になるときもあるから。例えばタイムアウトのときにいっぱい言わなきゃなんないことがあるけど、1言ったら皆わかるとか。そういうことが座学で身につくという面はあるとは思います。特に高校生とかクリニックで指すとしゃべれないじゃないですか。それは理解してないからしゃべれないということもあると思うんですよね。言葉にしてイメージするっていうのは大事だなって思いますね。

 

小谷 さっき言ったこととものすごく矛盾するんですけど、ズボンさんの話を聞いてウチの部員が読んでないほうがいいのかなとも思いました。この本のいいところはオフェンスがこう来ました、じゃあどうするという感じで、裏表があるところなんです。だからそれを座学でもいいですし、オンコートでもいいですし、考えさせながら指導を進めることができる。だからあまり部員は読んでないほうがいい()

 

片岡 この本によってバスケの用語が統一される強みがあるということでしたけど、少しだけ訂正させてください()。3つあります。1つ、その側面があると同時に、この本では一つの現象をこの単語で言っている、別の本では別の単語で言っているということだと、結局、コート上で様々な言語が飛び交っているのと同じことになります。ですが、この本は小谷さんをはじめとして、研究者の皆様が編集された『バスケットボール用語事典』という素晴らしい書籍での事例をそこをベースにされていると思います。奇をてらった用語を使ってない本だというところは統一感があって参考になるかなと。2つ目は、座学に関しては、既に実際に動画や資料を制作し、非常に中身のあるチーム内の講習をされているコーチや先生の方はたくさんいらっしゃると思います。ただ、その予習をするときに、この書籍は非常に役に立つと思います。例えば、クロススクリーンの守り方を整理する際に、書籍を使っていただくことで新しい発見に繋がるはずです。選手とのディスカッションを深めることができるというのはプラスαになりうる。勿論、この本の特定のページ等を教材にしてまた新しくチーム内での座学を計画する際にも参考になる本だと思っています。

 

小谷 用語については『バスケットボール用語事典』が出たのが3年くらい前なんですけど、あれからもう用語がかなり変わっていて、あの本には載っていない用語も、『戦術学』には載っているんです。僕らが考えたのは用語の統一は無理だということが大前提でスタートしている。だから同義語とか同じ言葉でいろんな意味を持っていたりとかということがあって、だから今後も用語が統一されることはないと思うんです。なぜならアメリカでどんどん新しい用語ができてしまって、さらにヨーロッパでもありますし、それを日本で統一しようとしても、僕らはバスケをアメリカから移入してやっている時点でなかなか難しいのかなと。だから用語については統一するのは難しいという前提で、いろいろとまとめて扱っていく必要があるんじゃないかなと。

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