『バスケットボール戦術学2』刊行記念座談会

かつてのライバルが、

お互いの長所を重ね合わせ、

書籍として形になってことに痺れる

宮本 私の個人的な興味で申し訳ありませんが、この本は今回、小谷さんと前田さんお二人で書かれてるわけですが、お二人がどんな出会いをされて、意気投合されて、この本を書こうということになったんですか。

 

前田 それは小谷大先生に聞いてください(笑)。

 

宮本 お二人は同級生ですよね。それぞれ能代工業と京北高校のマネージャーだったんですか?

 

小谷 そうなんです。僕は京北に一般受験で入ったんですけども、佐藤健介とかスポーツ推薦の奴らがもうものすごくて、そんななかでも試合に出られるように頑張ってやっていたんですけど、2年生になるときに自分達の代のマネージャーが辞めてしまって、田渡(優)先生から「お前プレーイングマネージャーやってくれないか」と言われて、「まあプレーもできるならいいか」と思って、始めたんですけど、それ以来、プレーはできず、マネージャーになったんです。そうなるともう目標がないんです。それまではプレーヤーとして上手くなろうと思って生活してきたけど。そんなときに当時、新潟工業で新潟フェスティバルというイベントがあって、そこに京北も参加してたんですけど、新潟工業のマネージャーがすごかったんですよ。新潟フェスティバルに集まる40何校を回してるんですよ、高校生が。それを見てすごいなと思って、その時に新潟工業のマネージャーの近藤沙織さんにマネージャーとして何をやったらいいかということを聞いて、仕事を教えてもらって、そこから日本一のマネージャーになろうと思ったんです。となれば僕らの代は能代工業がめちゃくちゃ強い、じゃあ能代工業のマネージャーはどんな奴なんだと思ったら前田浩行だった(笑)。で、またシュッとしてるんですよ能代工業のマネージャーは。前田さんの上の代のマネージャーさんも練習中に腕時計なんかしてて、それ見て僕も腕時計をつけるようになった(笑)。それでもチームとしては能代工業は強いからとても京北は勝てないですけど、マネージャーとして能代工業を超えてやろうと。一方的に僕だけがライバル視してました()。たぶん前田さんは僕のことなんか見えてなかったと思いますけど。

 

前田 能代工業のマネージャーは、今考えるとルーティン化されている部分が多いんです。特に僕らの代は勝つためのレールができていたので、マネージャーも何をやらなくちゃいけないかということはほぼほぼ決まっている。それをいかに徹底するか、そしてチームメイトに徹底させるかということだったので、あんまり考えてる暇がなかったのが現実です。練習メニューはほぼ決まっていたし、遠征に言ったらやることも全部決まっていたし。だからキビキビしてしっかりやっているように見えているだけで、実はそんなに考えてない()。だからそういう意味では、他のチームのマネージャーさんの方が大変なんだろうなというのはありますね。単にチームが注目されていたということだけの違いだと思いますよ。

 

小谷 僕のことはどう見えてました?

 

前田 ウインターカップは京北高校をつかって練習してたんです。その時になんか走り回ってるやつがいるなっていう印象はありました(笑)。で、数年後にインカレがあったんですけど、日体大の応援席で何千人を前にとんでもない応援をしてるやつがいて、あっあれは京北の走り回ってたやつだなって思い出しましたよ()。あれはもう僕には真似できない、尊敬します。

 

片岡 小谷さんと前田さんがこの本を作るきっかけになるような食事の席に私も参加していました。本書籍が誕生する根っこには、「日本バスケ界への貢献」という共鳴や「二人で何かを成し遂げよう!」という友情が存在することが、振り返ると非常に感慨深いです。食事の場で、昔の話や、近況、今後の展望などを話されている中で、小谷さんが一緒に何かやりたいねっていう熱いラブコールを投げる。前田さんも応じる。ご自身が経験されてきたことで「日本のバスケットボールに貢献できることは何だろう?」とお二人で話が進む。前田さんは、ヨーロッパでシーズンを過ごす中での印象的な学びとして、攻防の激しさ、戦術の応酬、各選手の対応力の凄さ、深い部分での駆け引きの凄さを語っていました。そこの奥深さを伝えることで、バスケ界に貢献できるかもしれないと話が弾んでいました。では、「それを書籍にするにはどうすればよいか?」という具体的なテーマに対し、小谷さんがご自身の経験を踏まえて様々な情報を交換されていたり、役割分担のアイデアを練っていました。私の中では、小谷さんは、日本代表の選手を育てるというよりは、バスケ界の底上げなどに情熱を燃やされている偉大な方です。前田さんは、男子アンダーカテゴリーの代表や、男女代表チームの情報などを扱うテクニカルハウスの部会長という重要な役職を務めていらっしゃります。その時から、お二人のコラボレーションで、普及の面でも、強化の面でも無限の可能性が拡がると感じていました。また、かつて、同じ立場で競争しあっていた仲間が、お互いの長所を重ね合わせ、それが今、こうして書籍として形になって、とても痺れます。

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