『バスケットボール戦術学2』刊行記念座談会

戦術分析をするための前段階の資料として『戦術学』は機能する

片岡 以前、コーチ向けのオンライン講習会で前田さんのが紹介されたゲームの観戦方法や戦術的な知識の深め方が非常に印象的でした。「成功したポゼッションも、そうではないポゼッションも、必ず理由がある」と語って、ぎっしりとメモが掛かれたノートを見せていただきました。とても衝撃を受けました。「高価な分析ソフトが無くても、まだまだやれる事がある」と勇気をいただきました。森さんは分析ソフトがない場合、どんな風にゲームを見たり、整理したり、まとめたりしていますか。

 

森 いろいろな見方があると思うんですけども、僕の役職の場合、スキル的な攻防を見る場合が多い。例えばチームとして戦術であるディフェンスに対してこうしようというのはあると思うんですけど、個人ではどう打開できるのか、もしくは戦術を遂行する上でスキル的には何が必要かみたいなのを、よく見ていますね。だからそのやり方をメモしたり、あとから見返せるように時間をメモしたり、どういうプレーだったりだとか、あとは意外と重宝するのが、どの選手がどのムーブを多用しているかということを知っておくと後からの分析に役立つので、そういうのを整理するのは多いですかね。それ自体は一回知っておけば、そのプレーヤーがいるチームを追いかければ、何回も見ることができますし。あとは込み入った分析ソフトじゃなくても、ワンクリップ、ツークリップ抜き出すだけならどのパソコンにでも入っているもの、WindowsだったらMoviemakerだったりとか、MacだったらQuickTimePlayerとかで切り出せるので、そういうクリップを自分の中にストックしておく。それを積み重ねた後に、自分の場合、ブログだったりで体系化して自分のメモとして整理しておくことが多いです。アウトプットすることによって整理されますからね。それを順繰りにやって、深めていっているという感じですかね。

 

前田 そこが森君のすごいところですよね。オレなんかインプットばっかりして、アウトプットしてないから、本当に今回はいい機会だったなと思ってますけどね。

 

片岡 前田さんが講習会で、さきほどのメッセージをおっしゃったのは、「分析ソフトがないから分析できない」というコメントを言われる方が多いという背景もあったりするんですか。

 

前田 今回、この本もソフトにはまったく依存していないですよ。

 

小谷 現時点でクリップを切り取って、それを評価してくれるようなソフトというのは存在してないと思いますよ。その映像を解釈するものはない。ようはその映像をどう評価して、どう表現できるかという能力が求められてくる。それは人間がやるしかない。結局、分析ソフトがやってくれるのは、現時点では切り取って仕分けしてくれるとか、それが何回あったとかっていうところまで。それこそそれをどう分析するのかというところが重要になってくる。そのプロフェッショナルがアナリストでしょうね。

 

前田 確かに今回、この本に書いてあることを目で見て、人が判断してどうするかというところなので、分析ソフトはもう回数とか、パーセントがメインですが、それとは全然、違うことが書いてあるんで、そういった意味では良かった。

 

小谷 森さんのアウトプットも、分析ソフトを使って、そのクリップをさらに評価して解釈してという作業が入っていると思うんですよ。それは森さんができることで、分析ソフトがやってくれることではない。

 

森 そうですね。結局、同じ映像を見ていても、見方によって要素は無限にあると思うんですよ。それこそオフェンスの評価であったり、オフェンスの個人の評価であったり、ディフェンスがどうだとか、他の要素はとか、本当に見るところはいっぱいあると思うので、それを自動に集計するのはほぼ不可能だと思うし、それを機械に求めるべきでもないと思っています。だからこそコーチがいるんだと思うんで、コーチがどう素材を味付けして、料理していくかというのが腕の見せどころだと思うんですよね。この本で紹介できたものとして、その原材料というか、判断基準というか、そもそも相手がやってきていることを理解できないと分析までに行き着かないと思うので、その前段階を知る資料として『戦術学』は機能すると思うんです。ネクストディフェンスとか、比較的新しいものも入っているので、改めて細かいところまで勉強したりもして楽しかったです。

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