『バスケットボール戦術学1』刊行記念座談会

ピック&ロール全盛の今日

オフボールスクリーンの評価は?

小谷 今回の本書のテーマの一つがオフボールスクリーンだったわけですけど、これだけピック&ロール全盛の中でBリーグやヨーロッパでオフボールスクリーンについてはどのように評価されているんでしょうか。

 

森 Bリーグでということでいえば、オフボールスクリーンを実際に使う場面としては、プレーのエントリーが多いです。そもそもレベルが高くなってきたときに自分でカットしてボールをつなぐことが難しくなってくるんですよ。そのためにスクリーンを使う、そのズレをどんどん大きくしていってそのままスクリーンアクションをメインとして使うのか、その後ピック&ロールに入るかという形で、使っていますね。まったくオフボールスクリーンのないセットというのは今の時代だと少ないと思うので。そういった意味では大事な要素だと思いますね。この本で書いているように、エントリーで相手に対応されて、僕らが対応できなかったら、その時点でボールが止まってしまうので、そこは注意を払うようにしています。

 

小谷 吉田健司先生(筑波大学HC)の本にもボールを保持する際のオフボールスクリーンの重要性について触れられているんですけども、レベルが高くなってくるとボールを受けるということが難しくなる。そうなればスクリーンの習得は必須になりますよね。

 

森 特に前田さんがいらっしゃったドイツのチームなどは、普通にやっていたらボールを貰えませんから。ちょっとでもこじ開けてボールを回すようにしないと、固まったままオフェンスが終わってしまいます。アグレッシブなチームに対しては非常に重要な要素になってきますよね。

 

前田 オンボールとセットみたいな感じですよね。いかにいろいろなものと組み合わせてやるか。必ずしもそれがメインではないですけど、スペースを作るために使ったりとか、そこを囮にして違うところをメインにしたりだとか、以前と比べると使い方が多様になってきていますよね。あとスリーポイントの距離が伸びてきているから、スペースも広がってきているし、コートの使い方自体が大きく変わってきているなという印象ですね。

 

片岡 2016年のJBAコーチカンファレンスでルカ・パヴィチェヴィッチ氏が「ヨーロッパにおけるバスケットボールスタイルのトレンド~Pick&Rollの有効性」というテーマで登壇されました。

その際、オフボールスクリーンは非常に美しく、有効な戦術である反面、完成させる為の難しさを語っていました、例えば、シューターにオープンで打たせる為のプレーだとします。様々なオフボールスクリーンを駆使してシューターをフリーにさせようとしても、最終的にシューターにボールが辿り着かないと、途中のスクリーンが無駄になってしまうという事が“難しさ”の理由です。反面、ピック&ロール(オンボールスクリーン)の場合は、“有効性”と“効率の良さ”を強調されていました。ユーザーとスクリナーの2対2が成功しさえすれば、ユーザーのドライブやシュート、ダイブかポップをしたスクリナーへのパスでチャンスを作れます。また、ヘルプが寄った際には、キックアウトパスからの3ポイントシュートなど、周りの選手にもチャンスを作れる。それが“有効性”という理由です。

ワールドカップ等を見ていると、オフボールスクリーンとオンボールスクリーンを組み合わせたプレーも数多く見られました。オンボールスクリーンで仕掛ける前に数多くのオフボールスクリーンがあり導入として使用される。ディフェンス側も気を抜いてミスをすればイージーショットを許してしまう。シューターをフリーにするだけではなく、様々な意図で使用できる戦術である事を改めて感じました。

 

小谷 オフボールスクリーンは育成年代ではどのような評価なんでしょう?

 

片岡 BリーグのU-15チャンピオンシップや、地域のジュニアチーム等との練習試合、試合観戦でも様々なスタイルのオフェンスに触れることができました。オフボールスクリーンを一切使用せずに、ドライブからの仕掛けにオフェンスを絞るケースもあれば、ローポストを起点に、オフボールスクリーンやカッティングを狙いとするチームもありました。

スペインのU―15世代の全国大会の準決勝、決勝を見ると、ほぼ1対1からの仕掛けを起点とするスタイルを貫いているのを観戦したこともあります。

様々な哲学があると思いますが、個人的には、次のカテゴリーに進んだ際に、どのプレーも知識や経験としては必要となるので、バランス良く経験できるような取り組みが良いように感じています。SOBやBOBなどのプレーでは、時間が止まる分、準備をする時間があります。オフボールスクリーンを体得させるには、有益なのではないかと感じています。シューターに打たせたいプレーなのか、それともプレーの導入として使用するのかはショットクロックに応じて変わってくると思いますが、ポジション、スクリーンのかけかた、使い方等を経験できます。また、チーム内のスクリメージで、ディフェンス側のコミュニケーション、交わし方等も学べます。

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